近年、ビジネスシーンにおいて業務のブラックボックス化が問題視されていることをご存じでしょうか。ブラックボックス化とは、真っ黒な箱のように、中身が見えなくなる状態を指す言葉です。
業務のブラックボックス化は、ビジネスにおいてさまざまなリスクを引き起こす原因となるため、早急な対応が求められています。
この記事では、業務のブラックボックス化について詳しく解説します。原因や解決方法、便利なツールを知ることで、業務のブラックボックス化を回避しましょう。
業務のブラックボックス化・属人化とは?
ブラックボックス化に類似するワードに「属人化」があります。ブラックボックス化と属人化、2つの言葉に意味の違いはあるのでしょうか。
ここでは、業務のブラックボックス化と属人化、それぞれの意味について解説します。
業務のブラックボックス化とは?
そもそもブラックボックス化は、もともと科学論や科学技術社会論で使用されていた言葉です。科学が成功さえすれば、内部の複雑な機構に着目する必要はなく、それゆえ内部構造は不透明で不鮮明になっていくことを表現しています。
ビジネスにおける業務のブラックボックス化とは、成果は確実に出せているものの、業務のプロセスや工数が不明瞭で、特定の従業員以外はわからない状態を指す言葉として使用されています。
業務の属人化とは?
業務の属人化とは、業務が特定の人に依存している状態を指す言葉です。
業務の属人化は、長年担当者が変わっていない業務や、人員が少なく一人あたりの業務量が多い職場で起こりやすい傾向にあります。
「担当者が不在で対応できない」「担当者によって製品の品質に差が生じる」といった問題は、業務の属人化によって引き起こされます。業務の属人化は、やがて業務のブラックボックス化へと進むため、早期に解消すべき課題といえるでしょう。
ブラックボックス化の原因
さまざまなリスクが懸念されるブラックボックス化ですが、そもそもなぜブラックボックス化は起こってしまうのでしょうか。ブラックボックス化の原因は一つとは限らず、複数の原因によって引き起こされると考えられています。
ここでは、ブラックボックス化を引き起こす主な原因について解説します。
高度なスキル・専門性の高さが必要な業務が多い
企業間競争が激化する現代では、企業は高度なスキルや専門性の高さを保持し、競争優位性を築かなくてはなりません。
そのため、専門性の高い業務は、どうしてもそのスキルや知識を持っている従業員に任せがちになります。他の従業員が介入する機会がなく、該当従業員のみの判断に頼ることから、次第に業務のブラックボックス化が進みます。
組織の成長による分業化
組織が急成長して業務量が急激に増えた場合、迅速に対応するために専門分野ごとに部署を新設し、担当する業務を分業化するケースが多く見受けられます。
業務の分業化は、企業間競争に勝つ方法として有効である一方、業務のブラックボックス化を引き起こす原因にもなるため、注意が必要です。
リモートワーク
リモートワークは基本的に一人で作業を進める場合、誰かに話しかけられることもなく、作業に集中でき、業務の効率化や生産性の向上が期待できます。
一方で、「誰がどのような仕事をしているか」の把握が困難となり、ブラックボックス化が進む原因となってしまいます。
ブラックボックス化はなぜ問題なのか?
ブラックボックス化が進むことで、どのような問題が起こり得るのでしょうか。
ここでは、業務のブラックボックス化によって引き起こされる、具体的な問題について解説します。
業務がストップする
従業員が体調不良で欠勤したり退職したりすることは、珍しいことではありません。業務手順の共有が行われていれば問題ありませんが、業務がブラックボックス化している場合、他の従業員が代わりに対応する術がなく、業務はストップしてしまうでしょう。
不正につながる
業務のブラックボックス化は、業務プロセスが可視化されていない状態のため、誰かが不正行為をしていたとしても、気づくことができません。不正が発生した場合、組織の社会信用は落ち、存続の危機にさらされる可能性もあるでしょう。
従業員同士の連携が取れなくなる
業務のブラックボックス化が進むと、個々の仕事に専念することになり、従業員同士の連携が取りづらくなります。従業員同士のコミュニケーションが不足すれば、業務情報の伝達もおろそかになり、やがて企業全体での意識統一も難しくなるでしょう。
ブラックボックス化を解消するメリット
業務のブラックボックス化を解消すべきだとは理解しつつも、日々の業務に追われ、実現できていない企業は少なくありません。
ブラックボックス化の解消が急務であることを認識するためにも、ブラックボックス化を解消するメリットについて確認しましょう。
ワークシェアリング
業務のブラックボックスが解消された場合、業務に関するノウハウが組織全体で共有できるため、ワークシェアリングが可能となります。
ワークシェアリングとは、これまで一人が担当していた業務を複数人で分担することを指す言葉です。担当者が不在でも他の従業員が対応できるため、業務を一定のクオリティで継続でき、企業の信頼損失も回避できます。
ナレッジ資産の蓄積
業務のブラックボックスが解消され、業務のノウハウを他の従業員と共有できている場合、ナレッジ資産は組織に蓄積されています。たとえ担当従業員が退職したとしても、引き継ぎがスムーズにでき、業務の継続が可能です。
企業価値の向上
社内ナレッジを蓄積すれば、より多くの従業員が、より多くの業務や情報について知ることができます。従業員によって見る視点が異なるため、特定の担当者では気づくことができなかった新たな価値や活用方法の発見にもつながり、企業価値の向上も期待できるでしょう。
ブラックボックス化対策の基本は「マニュアル化」と「標準化」
業務の孤立によって引き起こされるブラックボックス化は、業務を「マニュアル化」と「標準化」することが重要です。
まずは、ブラックボックス化の原因となる属人化を防止するために、特定の担当者しか把握していない業務をできる限りマニュアル化します。
業務のマニュアル化とは、特定の業務プロセスや作業手順をまとめ、文書化する取り組みです。
長年の実践や勘を要したり、個人の創造性に依存していたりなど、マニュアル化が困難な業務もあるでしょう。しかし、そのような業務も、一連の流れだけでもマニュアル化しておくことで、引き継ぎが容易となり、属人化の防止ができます。
業務のマニュアル化は、業務の標準化に必要不可欠なものです。
業務の標準化とは、いわば業務の仕組み作りです。誰が取り組んでも同じ結果が出せるよう、成果物に明確な基準を設け、それを達成できるよう業務プロセスや作業手順を統一します。「誰でも」「いつでも」「同じ」作業ができる仕組みを作ることで、業務プロセスと品質の一貫性が確保できるでしょう。
マニュアル化と標準化が進めば進むほど、個人の知識や経験、勘による差が生じにくくなります。特定の誰かがいなくても業務が回るようになり、結果的にブラックボックス化が発生しづらい環境が整うのです。
ブラックボックス化を防ぐ方法
業務のブラックボックス化を解消する前に、まずはブラックボックス化を防ぐ対策を講じることも重要です。
ここで、ブラックボックス化を防ぐ方法について解説します。
業務標準化しやすい業務を精査・選定
まずは、さまざまな業務の中から、業務標準化の対象となる業務を洗い出すことからはじめましょう。事務作業やバックオフィス業務など、誰がやっても同じ結果が出せる業務から取りかかるとスムーズです。
業務をフローチャートで整理する
ブラックボックス化の防止には、業務の流れを可視化し、直感的に理解できるフローチャートの活用も有効です。
フローチャートとは、業務の流れや作業手順をわかりやすく表す図のことです。業務の手順を明確に表すことで、専門性がない従業員でも業務の流れが把握でき、ブラックボックス化の防止が期待できます。
マニュアルを作成する
業務のマニュアルを作成することも業務の標準化につながり、ブラックボックス化の対策として有効です。
ただし、文章だけのマニュアルでは、読みづらく、内容が伝わりづらい可能性があります。文章で伝わりづらい部分は、イラストや画像を配置するなどして、一目でわかるよう工夫するとよいでしょう。
業務可視化ツールを使う
フローチャートやマニュアルよりも、さらに細かく業務を可視化するためには、業務可視化ツールを活用しましょう。
業務可視化ツールとは、従業員の業務プロセスを見える化し、どの業務にどの程度時間を費やしているかがわかるツールです。あらかじめ、業務可視化するための枠組みが用意されているため、簡潔に業務の整理ができ、共有もスムーズに行えます。
ブラックボックス化を防ぐ便利ツール
マニュアル作成やフローチャートの作成など、アナログな方法でもブラックボックス化を防止は可能です。しかし、より効率よくブラックボックス化を防止するためには、便利ツールの活用がおすすめです。
ここでは、ブラックボックス化を防ぐのに有効なおすすめツールを紹介します。
Trello
Trello(トレロ)は、カード形式でタスクを直感的に管理できる業務管理ツールです。
ツール内では、タスクをカードに記入し、ボードと呼ばれる場所で管理します。「ToDo」「進行中」「完了」と、タスクの進捗状況に合わせてボード上を移動させます。付箋を貼ったり剥がしたりするような感覚でタスク管理ができるので、ツール初心者でも抵抗なく使用できるでしょう。
簡単かつ効率的に業務の進捗を共有することができ、ブラックボックス化の防止にも有効です。
Trello公式HP
TimeCrowd
TimeCrowd(タイムクラウド)は、「誰が」「何に」「どれぐらい」時間をかけたのか、工数をひと目で確認できる業務可視化ツールです。
業務時間の記録はワンクリックで打刻できるだけでなく、次の業務を開始する際には前の業務が自動的に終了するため、非常に操作性が高いツールといえるでしょう。
どの業務に時間がかかっているのかを確認できることによって、ブラックボックス化の防止はもちろん、組織全体の業務改善も期待できます。
TimeCrowd公式HP
MITERAS
MITERAS(ミテラス)は、仕事の見える化に特化した労働管理ツールです。
従業員が申告した勤怠時間とパソコンのログをつき合わせることによって、労働状況に乖離がないかを客観的に確認し、記録できます。乖離があればアラートが表示されるため、サービス残業や休日の隠れ仕事の検知も可能です。
パソコンのログから「いつ、どのような作業をしたか」が可視化されるため、管理者は仕事の実態を正確に把握でき、勤怠管理の改ざんや不正打刻も防止できます。
MITERAS公式HP
Tayori
Tayori(タヨリ)は、「フォーム・受信箱」「FAQ」「アンケート」「チャット」の4つの基本機能を搭載したカスタマーサポートツールです。
カスタマーサポートチームが抱える悩み解決のために開発されたツールですが、現在はカスタマーサポートだけでなく、幅広い業種や用途で活用されています。
FAQ機能を使えば、ブラックボックス化の防止に役立つ、業務マニュアルを作成できます。また、パスワードやIP制限もできるので、社外秘のノウハウの共有も安心して行えるでしょう。
Tayori公式HP
タスク管理ツールもおすすめ
業務のブラックボックス化防止には、タスク管理ツールの活用もおすすめです。
タスク管理ツールには、プロジェクト遂行のタスクを洗い出し、管理できる機能が搭載されています。タスクの内容、優先順位、スケジュールなどを可視化することによって、作業効率の向上と共に、ブラックボックス化の防止も期待できるでしょう。
便利なタスク管理ツールを比較したい方は、ぜひ下記記事をご覧ください。
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まとめ
業務のブラックボックス化を放置すると、業務が停滞したり不正が発生したりなど、さまざまなリスクが発生します。一方で、ブラックボックス化を解消すれば、業務の共有が可能となり、ナレッジ資産の蓄積にもつながるため、早急に対応すべきといえるでしょう。
ブラックボックス化を解消するためには、まず業務のマニュアル化と標準化が欠かせません。便利なツールを活用し、業務のブラックボックス化解消を目指しましょう。